緊急逮捕-独占欲からの逃亡ー

「それにしても、世界は狭いもんだな。
茅ヶ崎と莉子さんが知り合いだったなんて。
きっかけは莉子さんの大学のイベントって言ってたな」

分厚いステーキにナイフを入れながら、何の気なしに地雷を踏んでくる旦那様。
ここにいる誰もが発する、一言一言に細心の注意を払ってしまう。もしもおかしなことを言われたら、すぐさま否定しないと大事になりかねない。
ただこの状況で、否定できるだけの度胸が私にあるかは不明だけど。

「えぇ。
その時は、講演会に来ていただいた先生と一緒に、藤田さんも来られてたんですよ。
大学生は休みの日も色んな活動があるみたいですよ」

「忙しくしてるんだな。
楓馬と出かける暇もないんじゃないか?」

そんな問いにすかさず飛び出したのが、今まで口を閉ざしていた楓馬君。
何を言い出すかわからない。
心の底からヒヤヒヤする。

「そうでもないよ。
この前はタルト食べたいって付き合わされた」

付き合わされたって…。

「勝手に付いてきたんでしょ」

「莉子が付いてきてほしそうにしてたからじゃん」

なんだと。
付いてきてほしいなんて、一言も言ってないでしょ。

「そうか。仲良さそうで安心したよ」

今にも喧嘩に発展しそうな空気を、旦那様は爽やかに笑い飛ばした。
仲が良いなんて心外です。
彼は私をからかって楽しんでるだけですよ。
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