緊急逮捕-独占欲からの逃亡ー
ちらりと隣に座る楓馬君を見ると、何事もないかのような澄ました横顔。
向かいには何も知らない彼の父親。そして茅ヶ崎さん。

それだけでも心が休まらないって言うのに、今夜はさらに混沌を深めている。
彼の存在があるからだ。

「わー、これなんですかー?すっごい美味しいですね。初めて食べましたよー」

口いっぱいに料理を頬張って、太陽のような笑顔を浮かべているのは淳ちゃん。

発端は、夕方頃、大学に忘れてしまっていた私の携帯をわざわざ届けてくれたこと。そこまでは何の問題もなかった。
ただ、そこにちょうど帰ってきたのは楓馬君。一瞬表情が曇ったかと思いきや、すぐに笑顔に変わり、淳ちゃんのことを強引に招き入れたのだった。

慌て戸惑う私のことなんて置いてけぼり。

この2人の間に何があるのかは知らないけど、きっと平穏には済まされないことが起きそうだ。

もう、どこに目をやっていいかわからない。
どこで何が起こるかわからない。そろそろ注意力が切れてしまいそう。
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