緊急逮捕-独占欲からの逃亡ー

「あんたが痴漢被害にあったら、次の駅で待ってる警官よりも先に俺がボコボコにできる」

ボコボコにしちゃ駄目じゃん。
もう少し穏便に済ませてもらわないと。

やっぱり危ない発想を持った警察官。
それに、今の状況で一番痴漢をしそうなのは楓馬君の方。

満員電車で押しつぶされそうな私たち。扉付近に追いやられ、真正面には楓馬君の首筋。
さっきから、目のやり場に困ってる。

なんでこっち向いて乗り込んじゃったんだろう。

ドアの方を向ければもう少しはマシ。
そう思って体を動かそうとすると、すぐに小声が飛んできた。

「ちょっと、動かないでくんない?潰されるよ、俺に」

あなたにかい。
向きを変えることを許されない私は、少し下を向いて、ひたすらにシャツのボタンを見つめた。

…近い。
これくらいで、ドキドキするな私。
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