緊急逮捕-独占欲からの逃亡ー
なんて考えていたら、いつのまにか、体がふわりと後ろに倒れていった。

寄りかかっていた扉が開いたらしい。
やばい。倒れる。

そう思った時、背中に腕を回された。
再び車内に引き込まれ、さっきよりも楓馬君との距離が近づいた。

「まだ降りるの早いって」

「あ、ありがとうございます」

これはまずい。
今までとは比べ物にならないくらい心臓が早く打ってる。
今すぐ顔を隠したいのに、この至近距離がそれを許してくれない。

「俺としては、扉が開くのにも気づかないほど、何を考えてたのかが気になるんだけど」

この意地悪な顔。
この状況を楽しみだした。

「今日の、ゼミのことを考えてたんです」

嘘だけど。

「俺といるのにゼミのこと考えてたの?

じゃ、ゼミの時間は俺の事考えててもらわないと、割に合わない」

なんて理屈よ。
ゼミの時間までこの人の事を考えてたら、一日中彼の事を考えてることになる。
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