私の中におっさん(魔王)がいる。~雪村の章~

「二条がいたからさ。魔竜と共に封印された土地を守るのも彼らの役割で、そこに侵入するのは不可能に近いとされていた。理由は三つあった。結界が張ってあり、屋敷が見えないことと、結界が解かれた事を知られれば二条が強襲にやってくるだろうと言う事。もう一つは、結界を破らずに進入する事は不可能に近かったという事が上げられた」

 結界が見えない事に関しては、三条一族であれば解決出来るが、重要なのは後の二つであった。
 風間が行くまでは三条家の誰もが二条一族は、昔のまま能力を保持していると思い込んでいた。それは、三条がそうであった事と、二条の噂は三条の耳にも入ってきていたからだ。

 だが、実際は二条一族は三条と違い、血族結婚を多く行わなかったため、呪術師の能力どころか、結界師の能力を持つ者すら少ないのが現状だった。

 ただ、噂通り、倭和国という国柄と土地柄のおかげで、ドラゴンの扱いに長けている者が多く、またそのドラゴンも固有種ばかりで、情報が極端に少ない物ばかりだった。

 そういう理由があって、今まで三条の中でも封印されし地に赴いた者はいなかったのだった。

「風間はそれでもその地へ赴いた。そして、そのおかげで多くの事が判明したのさ」
「風間さんは、危険を承知でどうして行ったんですか?」

 ゆりが尋ねたときだった。バタバタと慌てた様子で誰かが走ってくる音が響いたかと思うと、乱暴にドアが開かれた。
 ドアの前にいた見知らぬ彼は、開口一番に叫んだ。

「侵入者です!」


< 79 / 148 >

この作品をシェア

pagetop