何の取り柄もない田舎の村娘に、その国の神と呼ばれる男は1秒で恋に落ちる【前編】
「はぁ、はぁ、はぁ。」

天音は裏山の険しい道を登りながら、息を切らしていた。
気がつくと何故か足がここへと、自然と向かっていた。

「あ?また、お前かよ。」

辿り着いたその小さな小屋の前では、月斗が一人煙草をふかしていた。
辺りは、しんと静まり返って、かえってそれが不気味にも思えた。この静けさからして、今日は月斗の仲間達は居ないようだ。

「いいか、もうここには来るな。」
「ごめんなさい。でも、月斗にもう一度聞きたくて…。」

月斗は今日も、威嚇するように天音を睨みをきかせる。
しかし、そんな月斗にひるむ事なく、天音は月斗に一歩ずつ近づいていく。

「気やすく俺の名前呼ぶな!」

しかし、月斗は威嚇をして、それ以上は天音を近づけようとはしない。
天音も仕方なく、月斗とはある程度距離を取って足を止めた。

「月斗の不満って何?どうして反乱が起こっちゃうの?」
「あ?俺が反乱者だって言いてーのかよ。」
「そうじゃないけど…。不満がなければ、みんな平和に暮らせるんでしょ?」

天音は、今日の士導長の授業を聞き、自分なりに色々と考えてみた。
反乱はなぜ起こるのか?どうしたらみんなが平和に暮らせるのか?しかし、その答えは天音には検討もつかない。

「意味わかんねー。なんで俺にそんな事聞くんだよ。」

月斗はめんどくさそうに、頭をかきむしった。
本当は、天音など相手にはしたくないのだが、ここで放っておいたら、天音はきっとまた、何度も月斗を訪ねてくるにちがいない。
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