何の取り柄もない田舎の村娘に、その国の神と呼ばれる男は1秒で恋に落ちる【前編】

花火の後は誰も知らず


「うわー、きれー。」


天音は、空を鮮やかに彩る花火に、釘付けになった。
そして、なんだかモヤモヤしていた天音の心が、少しだけ晴れたような、そんな気持ちになっていった。

「…。」

その横で、月斗は何も言わず、無表情のまま空を見上げていた。

「ねえ、どうして、そんな目で見てるの?」
「は?生まれつきこんな目だけど。」

天音は、月斗の無機質なその目が気になって思わず聞いてしまった。
誰だって空に上がっていく花火を見たら、心が躍るはずだ。しかし…

「寂しそうな目…。」

月斗のそれは他の皆のものとは、明らかにちがった。
花火を見るその目はどこか寂しげで、深い悲しみをまとっていた。

「そんな事より、俺の頼み聞くんだろ?」

月斗は、そんな事どうでもいいと言わんばかりに、あからさまに話をそらし、その声はまた不機嫌になっていた。

「え、あ、そうだね!何でも言って!」
「…お前に…。」

ガサッ!

月斗が口を開いたと同時に、落ち葉を踏む誰かの足音が辺りに響いた。

「誰だ!」

月斗は気配を感じ、突然大声で叫んだ。

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