何の取り柄もない田舎の村娘に、その国の神と呼ばれる男は1秒で恋に落ちる【前編】
カツカツ
その時遠くの方で誰かの靴音が聞こえ、青の部屋の前を通り過ぎた。

「そろそろ帰った方がいいかもね。」

青が、天音を危険にさらさないように、そうささやいた。

「うん。わかった。」
「天音。」

頷いて立ち上がった天音を、青が呼び止めた。

「ん?」
「僕の願いは増えたよ。」
「え?」

天音はまたキョトンとした顔で青を見た。

「君の村に行く事。」

青が優しく微笑んでそう言った。

「うん!そうだね!」

天音も、青のその言葉を聞いて、嬉しくなって弾んだ声を出した。

「じゃあ、またね。」


ギー
バタン


その重い扉がいつもよりも大きな音を立てて閉まった。



「天音…君は何て言うだろう…。僕の本当の願いを知った時……。」



部屋にひとり残された青の瞳が、またいっそう暗い群青色に染まっていった。


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