何の取り柄もない田舎の村娘に、その国の神と呼ばれる男は1秒で恋に落ちる【前編】

その音に導びかれ歩を進めれば

「着いたーー!!」

天音はついに、城下町の入り口らしき、大きな門の前に到着し、嬉しそうに叫んだ。
正直、2日半も馬車に乗ってばかりで、体はガチガチ。疲労困憊なのは、否めない。

天音の前に立ちはだかるのは、天音の身長の2倍以上ある、立派な竜の紋章の描かれている大きな門。
流石は城下町とだけあって、門の大きさも半端ない。しかし、その門はどうやら閉じられていて、どうやってこの巨大な門を開ければいいのか天音には見当もつかないが、とりあえず近づいてみる。すると、そこには二人の人影が…。

「ばぁさん、いれてーな!」
「しつこい!!」

一人の若い男とおばあさんという、なんとも不思議な組み合わせの二人が、なんだか揉めているようだ。

「わからずやなばぁさんやな!」
「今日は、もう鍵をかけて施錠する。」

そう言って、おばあさんが門に手をかけた。

「ちょーっと待って!!」

その瞬間、天音は思わず横から大声を出し、二人の話に割り込んでいった。
その声に気がついたおばあさんは、ギロリと大きな目を天音へと向けた。

「中に入れてください!!」

天音は、こんなところで締め出されてはシャレにならないと、門に鍵をかえようとしたおばあさんの手を止め、中へと入れてもらうよう懇願する。
あたりを見回しても、どうやら城下町へと入り口はこの門だけのようだ。それならば、天音はなんとしてもこの門を通って、城へ行かなければならないのだ。

「何者だい?あんた。」
「私!妃になりたくて来たんです。」

おばあさんは、突然横から割り込んで来た小娘を、怪訝そうな表情でジロジロと見てくる。

「お前さんが!?」
「はい!」

おばあさんは、天音をバカにしたようにわざと大声を出し、驚いてみせた。
しかし、天音はそんなおばあさんに怯むことなく、元気よく返事をしてみせる。
ここんな所で、引き返すわけにはいかない。何としても、おばあさんにここを通してもらわなければ…。
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