何の取り柄もない田舎の村娘に、その国の神と呼ばれる男は1秒で恋に落ちる【前編】

「大丈夫!!私が手入れするから」

もちろん彼女も、そんなじいちゃんを手伝って毎日畑仕事をしている。
そのため、彼女が畑仕事を任されても何の問題はない。
もうこれ以上このやり取りを続けても、らちがあかないと彼女は考え、 とりあえず今日の所はそう言って、じいちゃんを無理やり家の中に押し込んだ。

「…そうか?」

しかし、じいちゃんは、やっぱり心配そうに彼女を見つめた。

やはり自分がしないと、落ち着かないのだろう。何十年も当たり前のように、そうしてきたのだから、急に何もしなくていいと言われても、戸惑ってしまうのは、仕方ないのかもしれない。

「はいはい、寝てて。健康第一でしょ!」

しかし、彼女は、そんなじいちゃんの背中を押して、ベットへ向かわせる。
じいちゃんの気持ちはわからなくはないが、彼女が一番大事なのは、じいちゃんの体だ。

「わかっておるが…。」

じいちゃんは、渋々ベットへと腰掛け、まだ心配そうに彼女を見ていた。

…全然わかってない…。

彼女が心の中でそんな事をつぶやいた事は、じいちゃんは知る由もない。
彼女は、じいちゃんを大切にしているからこそ、心配なのだ。長生きだってしてもらいたい。
なぜなら、じいちゃんは、彼女のたった一人の家族なのだから。

「あー、ヤンおばさんの所に、牛乳取りに行かなきゃ!」

時計を見ながら、彼女がそう叫んだ。時刻はもう11時を指していた。

「お前も忙し…」「だいじょうーぶ!!」

バタン!!
無理やりじぃちゃんをベットへと寝かせ、彼女は扉を勢いよく閉めた。

「はぁー。。」

扉の外で彼女は大きなため息をついた。

彼女の名前は天音(アマネ)。17歳。少し茶色がかった髪が肩まで伸びていて、目はぱっちりしている。世間ではいわゆる童顔の部類で、まだあどけなさが残る顔は愛嬌たぷり。体つきは華奢だが、畑仕事で鍛えられているため、体力には自信があり、病気は一切した事はない。
本来であれば、遊び盛りの年頃なのだが、この小さな村で、毎日じいちゃんと畑仕事をして、細々と暮らしている。
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