私の中におっさん(魔王)がいる。~花野井の章~
第十九話・私の愛おしい人

 ぼんやりとした意識が覚醒した時、私は宙に浮いていた。
 地上の遥か上空。人がペットボトルくらいに小さい。足のちょうど真下に、トラックが止まっていた。その周囲を行きかう人は、なにやら狼狽した様子だった。

「もしかして私、トラックに轢かれて死んじゃったの?」
 愕然とした瞬間、叫び声が上がった。
「ゆり、どこに行ったの!?」
「どこだ、ゆり!?」

 お母さんとお父さんが、必死になって私の姿を探していた。運転手らしき男の人は、怪訝そうにしきりに首を傾げている。

(私、死んだわけじゃないみたい)
 ほっと胸を撫で下ろす。
(今なら、なんか行ける気がする)

 私は、小さくなった両親を見据えた。

「さようなら……元気でね」

 そう呟くと、白い光が突然私を包んだ。赤希石のブレスレットが弾け飛ぶ。赤い玉は、バラバラと雨のように、地上に降っていった。

 私の意識は薄れていく。
 降り注ぐ石の雨を不思議そうに両親は見上げた。そして、はっとした顔をした。そんな気がする。意識が白く染まって行く。

 そんな中で、強く、強く、アニキのことだけを想った。
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