私の中におっさん(魔王)がいる。~黒田の章~

 * * *

「びっくりした?」

 黒田の問いに、ゆりは答えなかった。
 驚き過ぎて、ショックで固まってしまっていた。
 まさか、黒田が強姦された事があるなんて、ゆりは思いもしなかった。
 そもそも強姦とは、女性が被害に遭うものだという認識だった彼女は、あらゆる方面でショックを受けた。
 二の句が告げないゆりに、黒田は苦笑した。
 すると、ゆりは突然立ち上がった。

「私、赤井セイ、ぶん殴ってくる!」
「は?」
「だって、許せないじゃない! 私の大事なクロちゃんに……。金属バットでぶん殴ってくる!」

 本気で走り出しそうなゆりの腕を黒田は引っ張って、無理やり座らせた。
 黒田は本音では嬉しかった。〝私の大事なクロちゃん〟と言われた事が。
 しかし、それを隠して呆れたように告げた。

「そんな事しても無駄だから。下手したら貴族への暴力で死罪になるかもよ」
「構わないよ!」
「ぼくが構うの。キミがそんな事になったら、ぼくが嫌だよ」
「……うん。わかった」

 ゆりは渋々納得したようすで、座りなおした。

「ねえ……赤井セイと顔合わせて、辛くない?」

 ゆりは、心痛を感じながら訊ねた。
 黒田は少し下を向いて、なんともないと言うような声音を発した。
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