私の中におっさん(魔王)がいる。~黒田の章~



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 ここからは、黒田ろくの口から語れらなかった、あの後の出来事を語ろう。
 ろくは、赤井セイに強姦された後、傷ついた肉体と精神を抱えて、重い足取りで天幕へと帰った。
 暫く呆然としては、恐怖を思い出して小刻みに震える。
 それを繰り返して、朝を迎えた。
 そうして、やっと少しだけ落ち着きを取り戻したろくの天幕にバタバタと駆ける足音が響いた。

「失礼します!」

 切迫した様子で駆け込んできたのは、翼だった。
 その様子に、ろくは少しだけ平常心を取り戻した。

「どうした?」
「……投げ込まれたと――」
「は?」
「功歩の女の首が五体、美章指揮・ろく関の名で、功歩陣に投げ込まれたと報告が上がりました」
「……」

 ろくの絶句した様子に、翼は直感が確信に変わった。
 これは、ろくのあずかり知らぬ事なのだと。
 ともすれば、こんな真似をするのは一人しか居ないだろう。

「赤井セイですか」
「……」

 ろくはそれには答えなかった。
 今、一番聞きたくない名だ。翼の口から出ただけで、心臓が兎のように飛び跳ねた。
 おそらく、と言わずそうだろう。
 赤井自身、部下に仕事を与えたと言っていた。
 その仕事とは、名を語り、首を放り込んでくる事だ。

「抗議しますか?」
「……確証がない」
「……隊長? どうかしましたか?」
「別に。証拠も、確信もないんじゃ、どうしようもない」
「……」

 翼は訝しがった。
 明らかにおかしい。
 いつもの彼であったなら、結び紙を入手し、判子やサインから偽装だと赤井を追い詰めるはずだ。
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