私の中におっさん(魔王)がいる。~黒田の章~

 * * *

 今日は、ドラゴンについてちょっと調べてみようと思う。
 一、二冊くらい読んで、その後、歴史書でも見てみよう。
 カウンターのお姉さんに訊くと、ドラゴン関係は一階の棚にあると言われた。今日もまた、昨日の白髪のお姉さんだ。

 適当に本棚から二冊手に取り、パラパラとめくる。
 絵が描いてある方の本を机に持って行った。
 皮の表紙は紺色で『竜について~その生態と人間との暮らし~』と、金色の文字で書かれていた。著者名は青嵐と記されている。
 
 一ページ目には、この本についての説明。
 これは飛ばす。
 数ページ説明が続いて、目次になった。
 目次には、国別の固有種。人間と共に生きるドラゴン。幻のドラゴン、の三項目。
 私はとりあえずページを開く。

 国別の固有種は、国によって様々なドラゴンがいたけど、中でも目を惹いたのは、蜥蜴竜(サラマンデル)。龍青竜(ルルヒ)。豹竜(デファンスドラゴン)。土竜(タルバトープ)だ。

 蜥蜴竜(サラマンデル)は、倭和の固有種で、吐く息が炎に変わるドラゴンだ。雄が飛べて、雌は飛べない。雌は翼がなく、蜥蜴のような姿をしている。
 あの時、民族衣装の彼が出したドラゴンだ。
 おそらく、地上から攻撃してきた火を噴くドラゴンは雌だったんだろう。

 さらにもう一匹、龍青竜(ルルヒ)も見覚えがあった。
 倭和の固有種で、おそらく水竜だろうということ以外に記載はない。
 
 そして、豹竜(デファンスドラゴン)。倭和固有種。
 これも詳しい記載はなかったけど、絵に描かれたドラゴンは紛れもなく、倭和で見た鋭い爪と牙のドラゴンだった。

 土竜(タルバトープ)。
 これは、屋敷を破壊したドラゴンだ。遠目からだったし、一瞬だったけど、多分そう。これも倭和の固有種。
 土の中を移動できるドラゴンで、大きい物だと十メートルは越えるという。
 なんだか複雑な気分で、私は二項目目のページを開いた。
 そこには様々なドラゴンがいたけれど、これだと思ったのは四匹だけ。
 
 朱喰鳥竜(シュジキ)というドラゴンが一匹目で、あの貴族の馬車の馬代わりのドラゴンだった。赤い鶏冠が特徴で、荷台を引いて飛ぶこともできるんだとか。

 それともう一匹は、喰鳥竜(ジキチョウ)。このドラゴンは朱喰鳥竜にそっくりだけど、鶏冠がなく、色も違う。そして飛ぶことができない。でも、その代わりに足が物凄く速く、夜目が利くんだとか。
 山賊が好んで使うらしく、山を越えるときにも重宝される。軍でも使われることが多いらしい。

 もう一匹が四足竜(シソクリュウ)と言って、運搬用のドラゴンという印象。全国にいるらしい。朱喰鳥竜が車なら、四足竜はトラックみたいな感じかな。このドラゴンも軍で使われることがよくあるらしい。

 最後は豚竜(トンリュウ)というドラゴンで、食肉用のドラゴンだ。倭和にいたときに説明されたけど、実物(といっても絵だったけど)を見るのは初めてで、なんか感動した。

 三項目目の幻のドラゴンは、そんなに数がいなかった。
 文字通り幻と言われるドラゴンと、生息はしているけど滅多に見れないドラゴンと二種類いた。そこには、魔王に関係するドラゴンも書かれていた。

 アジダハーカというドラゴンが関係あるらしい。
 三つ首の魔竜とされていて、千の術を操るとされるこの魔竜は、倭和の一部の地域で信仰されている。
 一部の研究者が言うには、この魔竜は六五〇年前、魔王降臨の際に魔王と共に在ったとされている。

 アジダハーカ……魔竜と魔王。
 何か関係があるのかな?

 まあ、幻とされるみたいだし、信仰の対象ってことは、実際には存在しないと見る方が正しいのかも知れないけど。

 本を読み終えたところで、図書館の壁掛けタイプのウロガンドを見ると、お昼になっていた。

(どうりで、お腹が鳴りそうだわ)

 今にも鳴り出しそうなお腹を押さえて、私は図書館を出た。
 どこかでご飯を食べようと思って、ふと今朝のことを思い出した。
 あのおしゃれな店は、もしかしたらカフェかも知れない。

「よし、行ってみよう!」

 私は意気込んで、今朝の店へ向った。
< 18 / 146 >

この作品をシェア

pagetop