私の中におっさん(魔王)がいる。~黒田の章~

 * * *

 凛章の町並みは、おもちゃのお家を並べたようにカラフルで、色んな建物が建っていた。
 石造りの西洋風な建物もあれば、木造の洋館や西部劇の居酒屋みたいな建物もある。かと思えば、江戸時代のような建物があったりする。

 しかもそれが全部カラフルだ。
 オレンジだったり、水色だったり、色んな色が混じっている。

 住むには毎日、目がチカチカしそうだけど、観光にはテンションが上がって最高!
 感激してキョロキョロしている隣で、クロちゃんはすました顔をしている。
 周りを見渡してみると、私みたいに物珍しそうにキョロキョロとしている人はあんまりいなかった。

「なんか、私だけ田舎者みたい」

 苦笑しながら言うと、クロちゃんは私の方をチラリと見て、ケロッとした顔で言いやがった。

「良いんじゃない? 田舎者なんだから」
「ひっどい! 普通そこは、そんなことないよ。でしょ?」

 私が睨と、クロちゃんは、ハハッと笑った。無邪気な笑顔につい怒りが吹き飛ぶ。
 まあ、元々そんなに怒ってなかったし。

「ところで、どこに向ってるの?」
「ぼくん家。城の近くだから、まだ歩くよ」
(ふむっ。ぼくん家とな?)

 倭和の屋敷がなくなっちゃったから、行く当てもないし。元の世界へ帰る方法を探すのにも、家は必要だしなぁ。

「ねえ、私もクロちゃん家に住んでもいいかな?」
「……」

 クロちゃんはきょとんとした顔をしていた。そしてそのままの顔で頷いて、苦笑した。

「初めからそのつもりだったけどね。ぼくは」

 あら、そうだったんだ。

「じゃあよろしく」
「こちらこそ」

(よし、これで拠点は確保した!)

 クロちゃん家を拠点に元の世界に帰る方法を探そう!
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