私の中におっさん(魔王)がいる。~黒田の章~

 * * *

(良かった。ばれなかった……)

 ほっと一息ついた時、辺りがざわついた。

(なんだろう)

 顔を向けると、クロちゃんが人並みを突っ切って、真っ直ぐに私に向って歩いてきていた。
 歩き方からして、明らかに怒ってる。

(ヤバイ。やっぱバレてた!?)

 うわぁ……逃げたい。
 どうしよう……。
 私がわたわたと間誤付いている間に、クロちゃんは私のすぐ近くまで着ていた。
 私は思わず踵を返して、駆け出そうとした。

「逃げないで!」

 背に強い声が飛ぶ。
 私は、観念してその場に留まった。
 ゆっくりとクロちゃんが近づき、私のフードに手をかけた。
 はらりと捲られたフードの先に、眉根を寄せたクロちゃんがいた。

「やっぱり……」
「ハ、ハロー」

 私の引きつった挨拶に、クロちゃんは心底呆れたため息を吐いた。

「えっと……その、ごめんなさい」
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