私の中におっさん(魔王)がいる。~風間の章~

 * * *

 部屋を出て、カウンターに行くと、おじさんがもう立っていた。
 早起きだなぁと、関心していると、おじさんは私達に気づいて笑いかけてきた。

「仲直りしたか?」
「おかげさまで」

 おじさんの下品な笑顔に、風間さんは愛想笑いを返した。
 なんとなく風間さんの笑顔の種類がわかるようになってきた気がする。

「女なんて抱いちまえば機嫌治るだろ?」
「ええ、まったくその通りですね」

(なんて会話してんだっ!)

 風間さんは張り付いたような笑顔を返していた。

(っていうか、だ、だ、抱かれてないからね! もう、最低! おっさん最低っ! スケベ!)

「……奥さん純情だねえ。顔真っ赤だよ」
「えっ!?」

 慌てて頬を触ると、めちゃくちゃ熱かった。
(うわあ……恥ずかしい。また顔に出てたよ!)

「でしょう。そこが気に入ってるんですよ」

 風間さんはカラカラと笑う。
 私なんて、あんな会話で動揺しちゃうのに。大人だなぁ……。
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