私の中におっさん(魔王)がいる。~風間の章~

 * * *

 私の予想は、ずばり当たったのです。
 午後十二時。ウロガンドにて羊の刻。

(眠れないっ!)

 七時には床についたというのに、それから五時間まったく眠くならない! むしろ目が冴えまくってる!

「はあ……」

 私は密かにため息をついて、起き上がった。
 風間さんを覘いて見ると、風間さんはスヤスヤと寝息を立てていた。

(相変わらず、キレイな顔してるなぁ……。まつげは長いし、肌はキレイだし、羨ましい限りだぜ!)

 そんな風に思いながらテントを出ると、空には大きな三日月が出ていた。月を見つめながら深呼吸をすると、なんだか気持ちが落ち着いた気がする。

「ん?」

 煌々と燃える焚き火が目に留まった。露営地の中心にある焚き火の周りに誰もいない。夜の内は用心棒の二人が交代で起きているという話だったけど……。トイレかな?

 振り返ると、山が目いっぱいに映る。
 夜の山は不気味だ。黒い塊にしか見えない。なのに、生きてるみたいな感じがする。巨大な不気味な生き物が、人知れず息をしてるみたい。

 身震いしそうになったとき、山の近くでちらりと赤い光が揺らめいた。
 ぎょっとして肩を竦める。

(お化け!?)
 恐る恐る目を凝らすと、人影が見えた。

(なんだ。誰かがランプを持って歩いてるだけか)
 その人はランプの火をかざした。

「あれ? チャラ男?」

 チャラ男だ。
 遠くだけど、なんとかチャラ男の顔だと分かった。
 チャラ男は辺りをキョロキョロと窺っているみたいな動きをする。

「なにしてんだろ、あいつ」

 不審に思いながらも、私はテントへと戻った。
 ころんと横たわると、気分転換が効いたのか、すぐに眠気がやってきて私は眠りに落ちた。
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