御坂くん、溺愛しないで。
「御坂くん…!」
とりあえず深く考えることをやめた私は、彼の名前を呼んだ。
幸い、他に人はいなかったため助けられた。
もし食堂近くのような人の多い場所で御坂くんの名前を呼んだとしたらと思うと、ゾッとしてしまう。
「……先輩」
無視されるかなと思っていたけれど、御坂くんは素直に立ち止まって振り向いてくれた。
「や、やっと追いついた」
脚の長さが違うからだろうか。
歩く速さもこんなに違うだなんて。
いつも私の歩くペースに合わせてくれているのだということを痛感させられた。
御坂くんはさりげない気遣いもできる紳士的な人なのだ。
「どうして追いかけてきたんですか」
「だって、御坂くんが嘘ついたから…」
「嘘、ですか?」
「先に戻るって言いながら、もうこの先階段はないよ?」
私がおかしいと思ったことを指摘すれば、御坂くんは気まずそうに目を逸らしてしまった。