御坂くん、溺愛しないで。
ニヤニヤ笑う琴葉は私を助ける気がないらしく、助けを求めることを諦めた私は慌ててスマホを耳に当てて教室を後にした。
駆け足で廊下の隅へと移動し、周りに目立たないよう壁のほうを向く。
『琴葉さん?
もう切っても大丈夫ですか?』
先ほどからスマホ越しに琴葉の名前を呼ぶ御坂くんの声が聞こえていたけれど、反応がないためイタズラだと思ったのだろう電話を切ろうとしていて。
「ま、待ってください…!」
それだけは阻止しようと、ついに声を上げた。
『えっ…木原先輩?』
「……っ」
まさか今の言葉だけで私と当ててしまう御坂くん。
嬉しいようで、なんだか恥ずかしい。
「あ、の…そうです、木原です。
いきなりごめんなさい」
思わずスマホを握る手に力が入る。
緊張している証しだ。