恋の駆け引き~イケメンDr.は新人秘書を手放せない~
基本的に華やかな席が得意ではない私。
本当なら今日のパーティーもパスしたかった。
でも、課長に「秘書は全員出席」と言われては逃出すことはできなかった。

「おや、並木くん。今日はまたかわいいねえ」
会場の入り口でばったり出くわした院長に声をかけられた。
「ありがとうございます」
こんな風に買ったばかりの服を褒められれば、私だって悪い気はしない。

「君には私の分の仕事までしてもらって、感謝しているよ。それに、早くて正確だから、本当に助かる。真之介がいじめるようならいつでも言いなさい。すぐに私の秘書に異動させるから」
「はあ」
としか返事ができなかった。

院長が立ち去り、ボスも会場で来賓の方と談笑している。
こんな時、私は堂々として美味しいものでも食べていればいいのに、
分っていることなのに。

会場の隅で壁に背中をつけオドオドしてしまう。
そして、余計にターゲットになるバカな私。

「並木くん、今日はまた華やかだねえ」
「君にはいつも仕事をしてもらっているのに、お礼を言うチャンスがなくてね。感謝しているんだ。良かったらいつでも私の秘書にしてあげるからねえ」
外科部長も、内科部長も、かなりお酒が回っている。

「ほら並木くん。飲みなさい」
先生達から次々つがれ、私も少し酔っ払い気味。

ただ気になるのは、その横に立っている先輩秘書さん達。

すごい目で私を睨んでいる。

見ない見ない。こんな時は気がつかないフリが一番。


「いいわねえ若いって。それだけでチヤホヤされて」
ほら来た、お局様の嫌み。
「・・・」
言い返す言葉のみつからない私は、黙るしかない。

「あまり調子に乗らないことね」
捨て台詞を吐いて、お局様は消えていった。


あー、なんだか息苦しい。
やっぱり来なければ良かった。
私はそっと会場の外に逃出した。
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