薔薇の棘の痛みにキスを、あなたとの日々へ花束を


「…これが真相だ」
「メロが…私の許婚」
「知らないのは当たり前だ。悠介という存在は消えたからな。じいちゃんと宗しか知らない」
「そうなんだ…」

俺の好きな人は声を上げることなく、静かに泣いていた。

事故の後から、薔子は別人のように変わってしまった。
明るい性格は暗くなり、彼女から笑顔が消えた。

やっぱり、薔子は笑顔が一番だと俺は思う。
そのために彼女のそばで、彼女を守ると決めたんだ。

「俺は薔子の笑顔が好きだ。だから、もう泣くな」
「……言っていることと違うじゃない」

薔子は俺の頬にそっと触れて、流れる涙をすくい取った。

「もしあなたが人間に戻れたら、私はあなたと結婚するわ。あなたの弟さんじゃなくて、ね?」

悪戯に笑いながら言葉を続ける。

「その時は、『私がときめくような素敵なプロポーズをする』と、約束してくださる?」

突然の言葉に驚きつつ、彼女の目を見てしっかりと頷いた。
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