一夜からはじまる恋
「樹さんはどういうつもりで湊との結婚を考えていますか？」
会長の言葉に樹が返事をできないでいると
「実は、社員には極秘ですが私は心臓の病気でもう無理はできない。だから湊は医者の道をあきらめて跡継ぎとしていま社長をやっている。」
樹は湊が自分の運命を受け入れるきっかけがあったことしか知らなかった。
「努力してつかんだ夢をあきらめて社長としての運命を受け入れ、親ばかかもしれないがあいつは頑張って成果も出し始めている。相当の覚悟がいったはずだ。その息子のあなたに対する覚悟はわかった。」
会長は湊に似ているまっすぐな視線を樹に送っている。
「あなたの覚悟は？湊という一人の人間だけではなく、わが社の1000人近い社員の未来もかかっている企業の社長としての湊と結婚する覚悟は？」
樹は会長の言葉に改めて湊とは身分が違うことを感じた。

しばらく沈黙していると会長が
「石川、湊を呼びなさい」と秘書に指示を出した。

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