一夜からはじまる恋
「申し訳ありません」
大きな声がフロアに響く。樹もその声の大きさに思わずその方向へ視線を向けた。
そこには社員が部長に向かって頭を下げていた。
「受注の個数を間違えるなんて初歩的なミスだろ！しかも桁を間違えるって・・・先方はお怒りだぞかなり。今後の取引にも影響する。今更キャンセルはきかないだろ」
部長が感情的に注意するのを初めて見た樹はそのミスの状況を詳しく主任から聞いた。

「飯沼産業のイベント、イベントのコンセプトが類似していましたよね？そのイベントに回せませんか？」
樹の提案に社員が一時静まり返った。
「でも先方がそれでいいというかどうか。」
「飯沼産業の頭取とは親しくさせていただいています。連絡してみますか？」
「いち社員の判断では無理だ。社長に報告してくる。」
部長はフロアをでて社長室へ向かった。
< 242 / 349 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop