一夜からはじまる恋
少しして再び樹の部署に湊がやってきた。
「俺と一緒に飯沼産業に行けるか?」
湊の言葉に樹はうなずいた。
すぐに準備して樹は湊と石川の運転する車で飯沼産業へと向かっていた。

「樹を娘のようにかわいがってくれているんだって?」
湊の言葉に樹は湊を見る。
「そんなことはありません。でも先日もご挨拶に伺わせていただきました。」
「結婚式にも招待する予定なんだ。お詫びしてどうにか理解いただけるといいな。」
「はい」
樹は仕事をする湊の姿を間近で見るのが初めてだった。
「そんなに見られると緊張する。」
湊が笑う。
「うれしいです。最後に社長と仕事ができて。」
「敬語」
「今は勤務中ですから。」
樹はそう言って笑った。
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