一夜からはじまる恋
つわりはまだまだひどくてお昼休みは樹にとっては試練だった。近くの机で食事をされるとどうしてもにおいに吐き気がこみ上げる。

昼休みにはなるべく人のいない会議室に逃げ込んでいた。

その日も誰も使っていない会議室に逃げ込んだ樹は大きな窓の前で深呼吸しながら空を見つめた。

その時「やっと見つけた」と会議室に一人の男が入ってきた。
すぐにその相手が誰だかが分かる。

樹が振り向くとそこに立っていたのは湊だった。
なぜかその姿を見ただけで泣きそうになるのはなぜなのか、樹自身にも分からなかった。

でもそんな自分を見せたらいけない。樹は自分ひとりで育てていくと決めたことを忘れたらいけないと心で繰り返した。
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