一夜からはじまる恋
「ありがとう」
樹の考えは湊に伝わるらしい。湊は心から感謝を伝えた。

樹の存在がなかったら、自分は今日を迎えられただろうか。そう考えたくなるほど、湊の中で樹の存在は大きくなっている。

湊にとってもこの感覚は初めてで、自分でも説明がつかなかった。

数えるほどしか会っていない。お互いのことなどほとんど知らない樹にこんなにも心奪われて、こんなにも逢いたくて、こんなにも心満たされる。

同じように樹も想ってはくれないかとひそかに願っていた。
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