追放された悪役令嬢ですが、モフモフ付き!?スローライフはじめました

「ドライストロベリーで風味付けした紅茶です」
 私がテーブルに温かな湯気を立てる紅茶を置けば、マルゴーさんはメモを綴る手を止めて、コクリと紅茶を含んだ。
「……とても甘い」
 そう答えたマルゴーさんの頬は、なんだか少し紅潮して見えた。
「そうですか。よかった」
 ……あれ? 答えながら、ふと、疑問が過ぎる。
 ドライストロベリーはあくまで風味付け。味は普通の紅茶のはずなのだが? 私は内心で首を捻った。
 そうこうしている内にマルゴーさんは五枚のメモを仕上げ、メニューブックに挟み込んだ。
「では、私はこれで失礼します」
「はい、お気をつけて。……あ、雨ですね」
 見送りに出ると、カーゴの予想通りいつの間にか空は薄雲に覆われて、ポツリポツリと雨粒を落とし始めていた。
「いえ! まだほんの小雨ですから、このくらいはまるで問題ありません! それじゃあ、また!」
「あ……」
 マルゴーさんはそう言うと、私が止める間もなく雨の中に駆け出していった。




< 88 / 205 >

この作品をシェア

pagetop