最後の1枚

出会い



人の写真を撮るのが苦手だった。
いつも風景を撮ると、これだ!って写真が撮れるのに、人を撮るといまいちぴんとこない

「また小原は風景写真か。
風景写真もいいが、たまには山岸みたいな人物写真を撮ってみたらどうだ?」

それは先生にいつも言われること。
山岸さんとは、私と同じ写真部に所属する2年生だ。隣のクラスで、明るく元気な子。
山岸さんが撮るのは主に人物写真で、そのどれもが撮った人の性格を写すような明るい写真。

山岸さんは何度も入賞していて、風景写真で何度か賞をもらってる私も、山岸さんほどの見てるとこっちまで笑顔にされる写真は撮ったことがない。

確かに、風景写真とかよりも、人物写真の方が入賞しやすい。だからこそ先生に言われた言葉を頭の中がぐるぐる回りながら、私は沈んだ気分のまま、部室にカメラを取りに行った。
部室に入ると、山岸さんがいて、机の上に現像した写真を並べ、コンテストに出す写真を選んでいた。
その写真はどれも笑顔で、明るい写真だった。

あの先生の言葉がまた蘇ってくる。
カメラを奪うように取り、足早に部室を出る。

外に出ると、小高いところに建てられた高校から、見晴らしのいい景色が見える。
夜になると、星空が浮かび、昼にはビルなどに邪魔されない綺麗な青空が広がる。
その空を、自由に飛ぶ鳥たちに、鮮やかな緑をつけた木々たち。
それらに向かって、私は愛用のカメラを構える。

すると足元に、何かがあたった。
下を見ると、バレーボールが転がっていた。
なんでこんな所に?
取り敢えずボールを拾い上げて周りを見渡してみる。すると2人の男子が目に入った

「あれぐらいしっかり取れよ」
「いやいや!待って!?石井本気でやってきたよね!?」

Tシャツに短パンで、the運動部という格好をしていて、肘と膝にはサポーター。
バレー部だろうか?このボールでも探しに来たのかな?

「てかボールどこいった!?」
「知らねぇよ探せ」

あ、絶対そうだ。
私はボールを持ってそちらに歩いていく。
すると、私の方へ視線が集中した。
遠目からは分からなかったが、二人とも隣のクラスで見かけた覚えがある。

「あ、そのボール!
拾ってくれたの!?ありがとー!」
「あ、おい。…ったく!」

私は、目の前に来た2人に正反対の印象を抱いた。
人懐っこくこっちに走ってきた人は、背が高くて明るくて、優しそうだ。
逆に、もう1人の方は私たちから数歩離れた位置で呆れたように溜息を吐いて、こっちを見ている。背も、150ぐらいの私に比べて160あるかぐらいだ。小さい。

「ん?ていうか君、隣のクラスの子だよね!写真部でよく表彰されてる
えーっと…あ!小原ちゃん!だよね?」
「あ、うん。そうだけど…えっと…?」

相手2人の名前がわからず戸惑っていると、小さい方の人が大きい人の方の肩に手を置く

「お前、名前ぐらい言えよ。
小原…だっけ?が困ってるだろ」
「あ、忘れてた俺!林界人!よろしくな!
んで、こっちが…」
「石井和輝」

林くんを遮るように、石井くんが自分の名前を言う。

「あ、えっと…小原日向です。よろしく、林くん、石井くん。」
「小原…日向?」
「ん?どうした?石井?」
「いや、その名前どっかで…」
「林!石井!どこまでボール拾いに行ってんだ!!!」

石井くんが何かを言いかけた時、体育館の方から2人を呼ぶ声が聞こえた。

「げ、部長!
まずいぞ石井!早く行くぞ!」
「分かってる。」
「んじゃ、またね!小原ちゃん!」

どうやら2人を呼ぶ声は部長さんだったらしく、焦ったように走っていくふたりの背中を眺める。
石井くん、さっき何言おうとしたんだろう。

少しの疑問は残ったけれど、私は気を取り直して、また空やグラウンドから見える街並みにカメラを向けた。
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