最後の1枚

自分の写真

次の日も、山岸さんと一緒に部活の手伝いをしながら写真を撮る。
けれど、私はやっぱりこれだと思う写真が撮れなかった。

「うぅん…」
「どうしたの?小原さん」
「山岸さん…えっとね、あんまりいい写真撮れないなぁって思って。」

いつも通り、ある程度お手伝いを終えて体育館の隅っこで山岸さんと一緒に練習を見る。

「私も山岸さんみたいに、見てるこっちも笑顔になるような写真が撮れたらいいのに。」
「…私の写真。そんなんじゃないよ。」
「え?」
「私が写真撮るのって、誰かに笑顔になって欲しいとかじゃないの。
私が撮りたくて撮ってるの。
誰かが笑えない分、誰かが笑ってる写真を撮って、自分を安心させてるの。

結局、いい写真って、自分の撮りたい写真ってことでしょ?写真を見る誰かを想像するんじゃなくて、自分が永遠にしたい時を写真にするの…なんて、ちょっと厨二チックかな?」

そういう、山岸さんの笑顔はどこか悲しげな気がした。
…でも、自分が永遠にしたい時を写真に、か。
ふと、カメラの中に入ってる自分の撮った写真を見てみる。
鳥が水遊びしてる写真。紫や青、ピンクがまだらに混ざった空。
一つ一つを見てみると、確かに自分が止めたい時を写していた。

永遠にしたい人の写真。それってすごく難しい気がする。

「なんかいい写真撮る力になれたかな?」
「より難しくされた気がする」
「ええ!?嘘!?」
「うん、嘘。半分はね。
難しくなった気がするけど、なにか掴めた気もする。」

とりあえず、自分が撮りたい時が来るまで、待ってみよう。
無理してとるんじゃなくて、自然とシャッターを切りたくなるような時を。


暫くして、部活が終わる。
昨日と同じく、林くん、山岸さん、石井くんと1緒に4人で帰る。

「そういえば小原ちゃんと茜って明日の練習試合も来んの?」
「え?あー。私は行くよ!小原さんは?」
「私?私が行っていいものなの?」

山岸さんは林くんと幼馴染だからまだ何となくわかるけど、私は別にそういうわけじゃないし。あんまり言って邪魔になるのも悪いからな。

「別にいいんじゃね?
うちの体育館、上にギャラリーあるし、結構暇な奴らが見に来てる時もあるぜ。」
「あ、そうなんだ。」

石井くんが言うには結構友達とかが来る時も多いみたいだ。
まぁ平日だから、帰宅部の人とかも来るのか。

「じゃあ、見に行こうかな」
「お!やったね。石井のやる気アップじゃん」
「なんで小原が来ると俺のやる気が上がるんだよ。冗談は顔だけにしとけ。」
「酷くね!?」

林くんと石井くんの会話に思わず笑みがこぼれる。同じ中学ってだけあって、仲いいんだな。

「そういえば、界人。どこと練習試合するの?」
「あー、確か近くにある東高じゃなかったっけ?」
「あー!あそこね!結構南中から行ってる人も多いよね!」

東高とは、私たちが通う南ヶ丘高校と比較的近くにある高校だ。
近いからきっと練習試合とか組みやすいんだろうな。

「あ、そうだ。茜、小原ちゃん。
悪いんだけどさー明日もちょっとバレー部の手伝いしてくんね?
練習試合だから人足んなくて」
「え?そんなこと?それぐらいなら私はいいよ!小原さんはどうする?」
「私もいいよ。写真撮らせてもらってるし、明日も多分写真撮るかもだし。」

バレー部にマネージャーがいないと、全部選手がやることになるからね。
練習試合になると大変なのはよくわかる。

「わりーな、小原、山岸。
いっつも手伝ってくれて。」
「いいのいいの!
石井の写真は結構クラスの女子に人気だからね!」

あ、やっぱりそうなんだ。
背は低いけど顔整ってるし性格いいもんなぁ。

「…おい、小原。
お前今変なこと考えなかったか?」
「…」

滅相も御座いません。
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