人生の楽しみ方
君と出会い

君と出会った日

 君に出逢ったのは、人気の無い海で。君は独りで泳いで、休んでを繰り返していた。その自由な様子はとても美しくて。夕暮れの海で泳ぎながら夕日を眺めて、海から揚がってきた君はとても魅力的な女性だった。

 「この辺りの人なんですか?」

 「いいえ、東京からです。」

 まあ、そうだろう。この辺りでこんなタイプは居ないだろうから。海外製であろう水着や、化粧、髪型に至るまで君は本当に垢抜けていたから。

 「一人なんですか?」

 君は少し警戒した様な顔でじっとこちらを見る。

 「ごめん、変な意味じゃなくて。ただ、一人なら今夜の食事どうかなって。」

 君は少し考えて、微笑んで少し頷く。

 「でも、着替えたりしないとこんな格好じゃ…。後で待ち合わせでも良い?」

 「じゃあ、19:00にそこのホテルのロビーで待ち合わせしよう。」

 「大丈夫。でも、あんまり綺麗な服は持ってきて無いの…。」

 「大丈夫だよ。こんな所だもの。」

 君はきっとどんな服を着ていても、上品で美しいのにって言いたかったけれど、これ以上警戒されたく無かったし、レストランの予約やシャワーの算段を考えて控えていた。

 「じゃあ、また後で。」

 「はい。」

 君は短く返事をして、手を振る。俺も手を振ってホテルへ戻った。
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