人生の楽しみ方
 大手町の駅で君にメッセージを送る。君は直ぐに返事をしてくれた上に背後から現れた。

 「驚かしてみようと思って。」

 「相変わらずだな、ひなさんは。」

 デニムのパンツスーツにバレエシューズを履いて、籠バッグを持った君は素敵で。

 「そのバッグ、何が入ってるの?」

 「内緒。」

 君は手を握って歩き出す。

 「ひなさんに会いたかった。」

 「私に?したかったじゃなくて?」

 「したいし、会いたかった。」

 「私も。」

 ちょっと驚いた。きっと一方的に俺が好きなんだって思ってたから。握った手に力を込める。君はそっと耳打ちする。

 「優しくして?」

 その意味深な言い方にちょっとモヤモヤしながら地下道を歩く。そのまま地上に出て皇居へ向かう。君の手を捕まえて。

 「ひなさんは、今日一日、俺のモノ。」

 君は少し考えて真面目な顔して言う。

 「私は私のモノ。」

 言葉だけでも、君はままならない。少し悔しいなと思ってると君は俺に笑う。

 「じゃあ、望さんのモノごっこね?」

 その上手い言い回しに思わず吹き出す。きっと君は優しい女性なんだ。

 「行こ?」

 俺達は皇居の庭園に向かって歩いた。
< 24 / 71 >

この作品をシェア

pagetop