人生の楽しみ方
 眠る前、君と抱き合って話をした。

 「あの日、海でひなに会って良かった。俺は、君を見つけたから。」

 「私も…。」

 「一目惚れだった。」

 君は恥ずかしそうに目を臥せる。

 「ひなに愛されなくても仕方ない、俺がひなを好きならいいって、そう思ってた。でも、ひなは俺を好きになってくれた。」

 「望さん、優しいの。私が泣きそうな気持ちだとすぐに察して助けてくれて、いつもいつも、私の事ばかり。だから、好きになっちゃった。」

 「ひなの話を聞いて、ひなの心の傷を癒してあげたいって思った。だってひなは時折、とても優しい素直な瞳で見るから。それがきっと本当の君だって思った。」

 「望さん…。」

 「そんなひなが欲しくなった。ひなの全てが欲しくなった。ひなを愛してしまった。こんなに人を好きになったのは初めてで、ひなには驚かされてばかりなんだ。」

 「初めて?」

 「初めて。ひなの好きなものを知りたいって思うのも、何もかも。お互いだけでこんなに幸せになれるなんて、知らなかった。」

 「望さん…。」

 君を抱く腕に力が入る。

 「ひなを幸せにしたい。」

 「私も。毎日、望さんの事、考えてて良い?」

 「いいよ。」

 俺達は身体を何度も重ねたけど、初めて気持ちが重なったんだ。
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