ポンコツ女子、異世界でのんびり仕立屋はじめます
「クラレット! ケイトがおかしいんだよ! なんだかしおらしくて素直なんだ!」

 あまりにも正直なセピアの言葉に、普段は素直でもしおらしくもないのか、とがっくりする。

 クラレットは、「ああ、そういうこと」と言いながら、からかうような目で私の肩を見た。

「私たちの贈り物がずいぶんと効いたみたいね」

「あ、ほんとだ。僕たちが贈ったショール、使ってくれてるんだね。そんなに喜んでくれたの?」

「うん……。だって、家族にする贈り物なんでしょ?」

 ふたりの顔が正面から見られなくて、うつむきながら目をそらしてしまった。

「だいたいは身内で贈りあうものだな」

 アッシュの声と、気配がする。目が合ったらとたんに照れが入ってしまいそうだから、このまま勢いで出してしまえ。

「あの、これ、私からも新年の贈り物。……というか、お返しというか」

 セピアとクラレットの腰あたりを見ながら、ラッピングしたみっつの箱を差し出す。アッシュも近寄ってきたらしく、長い脚が視界に入る。

 身長の差もあると思うけれど、こうして三人を比べるとアッシュはずいぶんと股下が長いんだな。うらやましい。

「えっ、本当に?」

「あら。わざわざ買ってくれたの?」

「貯金に影響はないのか?」

 三者三様の質問をされるが、「うん」と「大丈夫」をカタコトでしか答えられない。

「せっかくケイトが選んでくれたんだし、いただきましょうよ」

「そうだね。これ、ラッピングの色が赤と青と茶色だけど、どれにしたらいいのかな」

「俺が青、クラレットが赤、セピアが茶色だろう。普通に考えれば」

 クラレットが空気を読んでくれたおかげで、私の手の上にあった箱はそれぞれの贈り主の手のひらに収まった。

 箱を開けた三人が、それぞれ「おおっ」という顔をしたのでほっと胸をなでおろす。
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