ポンコツ女子、異世界でのんびり仕立屋はじめます
「あら、薔薇の形のカフスボタンじゃない! 素敵だわ。このブローチと一緒につけても合いそう」

「僕のは白で控えめだから、ふだんのジャケットにつけても大丈夫かな? う~ん、もったいないから正装のときに取っておこうかなあ」

「俺のは青い薔薇か。今日着ているブルーグレーのフロックコートにも合いそうだ」

 会話を聞いている限りでは、社交辞令ではなく、本当に気に入ってくれたみたいだ。

「ありがとう、使わせてもらう」

 アッシュの言葉でうっかり、目を合わせてしまった。急に顔が沸騰したみたいに熱くなる。

「あ、は、はい」

 年越しのときに手を繋いでくれたことや、ショールを選んでくれたことを思い出すと、胸の中が炭酸水になってしまったみたいにしゅわしゅわする。

 ――これは、なに?

 今まで味わったことのない気持ちが急に自分の中に入ってきて、頭の整理がつかない。

「ケイト、顔が赤いけど、どうしたの?」

「まさかまた熱があるんじゃないでしょうね」

「だ、大丈夫! 暖炉に当たって熱くなっただけだから。早くミーティングしよう!」

 心配そうな三人にから元気を装って、話を切り上げる。

 地に足がついていないような、ふわふわしたおかしな感覚が消えなくて、ミーティングが全然頭に入ってこなかった。

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