シックザール
「警視殿は、早く中へ戻ってください。警視殿が今夜の主役です」

ハルトさんはあたしを見て、「嫌だ」と呟く。

「みんな、君をいないように扱ってる。汚物みたいに扱って、一人を大切にできない人たちと飲みたいなんて思わないよ」

また、目の前がぼやけそうになる。あたしは「仕方ないのです」と言った。

「あたしは、犯罪者ですから。みなさんのように善人ではありません。あのようなことには慣れています。ですからーーー」

話している最中に、声が震えあたしは話すのをやめる。ハルトさんにあたしの思いが全部伝わってほしい。でも、嘘をあたしはつかなければいけない。それが悲しくて、寂しいなんて……。

「……ジーナが居場所を失くして彷徨うなら、いっそのこと誰かが身代わりになればいいのに」

ハルトさんはそう呟く。

どうして、どうして、どうして、そんなことを言ってくれるのですか?こんなあたしに、優しくしてくれるのですか?怒ってくださるのですか?
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