サヨナラのために


「美羽ごめん!掃除長引いてっ…」


わざわざ走ってきたのか、肩で息をして少し咳き込みながら誠也は来た。


「これ、一年の佐々木さんが渡してって」


誠也の胸に押し付けて、私は背を向けて歩き出す。


「…そっか、ありがと」


「…振ったよね、その子のこと」


余計なこと言うな、私。


「…うん、でも、好きでいさせて欲しいって」


真っ直ぐだった。あの子の、瞳。


…自分の汚さが、浮き彫りになる。


「迷惑なら、迷惑だっていったら?」


少しだけ沈黙がおりて、手を捕えられる。


「…怒った?」


「怒らない!」


私はすぐに手を振り払う。


「美羽、かわいい」


…そうやってすぐ誤魔化す。

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