サヨナラのために
咳き込みながら、急いで壁に近づく。
この壁には、代々卒業する先輩たちが、この学校を巣立っていく先輩たちが何かを残すために書いたたくさんのメッセージが残されている。
好きな人の名前、感謝の言葉、クラスの絆、友情…
たくさんの想いや願いが書かれている。
目を滑らせて、ある文字を見つける。
「う、そ…」
息が、止まるかと思った。
“美羽が、美羽を幸せにしてくれる誰かと出会えますように”
私は知っている。
この文字も、これを書いたあなたのことも。
「っ…せいやっ」
枯れたはずの感情が、ぶり返す。
目から溢れる涙が、感じたことがないくらい熱い。