サヨナラのために


「ただいま」


「あらー、早いのね、今日は」


「んー」


適当に返事をして、私はそのまま二階に上がる。


自分の部屋に入って、ブレザーも着たまま、ベッドに倒れ込んだ。


なんだか、何もしてないのにすごく疲れたな。


看板のせいで出来なかったやりたいことなんて、たくさんあるのに。


今は、どれもやりたいと思えない。


ああ、なんだろう、なんか。


「結構、頑張ったんだけどな」


口からこぼれた声が、予想外に震えていて。


あれ、と思った時には目から涙が溢れていた。


「…え?なん、で」


とめどなく、次から次へと溢れていく涙。


驚きと、唐突に襲ってきた悲しさに、頭が、体が、追いつかない。


嫌だ。泣きたくない。


だって別に、どうだっていいじゃん。


看板だって、やりたくなかったし。


泣いたら、アイツらの思うつぼじゃん。


「ふ…っ…と、まってよ…」


苦しくて、息ができない。


自分がわけわからない。でも、何かが、悲しい。






「せ、いや」


< 90 / 153 >

この作品をシェア

pagetop