幼い私は…美人な姉の彼氏の友達の友達に恋をした

20、両想い

 
 意識がゆっくりと浮上していく。と同時に瞳を開いていけば、いつもの景色が目に入る。

 必要最低限の生活を出来るようにしか存在しない室内は、ひどく殺風景で色がない。殺風景な部屋の天井を見ながら、幸か不幸かジャッジ出来ない己のあさましい夢を要は反芻する。

(俺が愛の告白とはな、笑える)

 どうせ夢ならオッケーを貰えるまでみたかったと要は思う。夢だから言えた正直な気持ち。冗談抜きで心は涼介を生涯思っていてもよい、陸の生身の身体だけは、要だけのものであれば文句はない。

(快楽だけ教えて、俺に堕ちればいい…。身体が手に入るなら、全財産つぎ込んだって構わない…)


 健気で一途な想いから、危ない思考に脱線していきそうになり、根性で正常思考に戻す努力をしていく。

 両手で顔を覆い、物理的に視界を遮断しながら、腹筋だけを使い身体を起こす。

 しばらく冷静になるように己に言い聞かせ、顔から両手を剥がし携帯で現在の時間の確認をしようとし、見慣れぬ頭がベッドの上あるのに気づく。


「は?」

 驚きから出た声は殺風景な室内に反響した。急ぎ口元を手で覆うが、口から発せられた声が消えてなくなる訳はなく、見慣れぬけれど間違いなく愛しい人の頭がゆっくりと起き上がっていった。


「…うぅ…ん、んぅ……う? 」

 視線が交わる。まさか記憶にある出来事は現実か? レッドアンドブラック賞の授賞式から秘書の裕介に連れて帰ってもらったのは、自宅にいるから間違いない。が、あの嘘みたいな夢は現実か否か。

 告白はまだいい。

 告白よりも何よりも、要は陸に対して嫌悪感しか湧かないだろう願いをしなかったか? 汗臭い身体を全身拭かせなかったか?

 冷水を浴びたように、身体から温度が消えていく。


「あっ! 要さん起きたんですね。もう起き上がって大丈夫ですか? 水を飲みます? ちょっと待ってて下さいね」


 先程まで突っ伏して寝ていたとは思えないほど生き生きに、台所へと向かう陸。

 嫌悪を浮かべ涙目で睨む顔を想像していた要には、陸の態度に拍子抜け。

 要の記憶にある全てが妄想で夢だったのだろう。簡単に聞ける内容でない行いだったが、陸と要、互いが衣服を着用しているからこそ、きっとあれは要のあさましい妄想だったのだと分かり一安心する。


「要さん、はい、お水と濡れタオルです!」

「…ありがとう」

「ふふっ、声も元に戻って良かったです。いつもの綺麗なバリトンボイスですね」


 ブワッ!!! 要は飲んでいた水を吹いた。若干気管に入り鼻の奥が痛い。

 ゴホッ ゴホッ ゴホッ!! ゴホッ!!

「あんっもう。大丈夫ですか!? やっぱりまだ体調は戻ってないんですね」

 一体何が起こった。まだ夢か??夢の続きのような態度の陸を不思議に思いながら、口元に垂れた水を手の甲で拭こうとし、それはなんと陸に阻まれる。

 陸の小さな手が肩におかれ、もう片方の手は水分を含んでないタオルを持っており、要の口元を優しく拭いていく。そしてオデコがコツンッとあたる。


「…………。」要の思考は停止した。


 口元を拭き終わり、オデコで熱をはかり平熱に戻っているのを確認した陸は、要の右横にちょこんと座った。

 要一人しか使わないベッドだが、サイズはキングサイズ。陸がベッドに乗り上げても、屁でもない。


「…あ…と…私も要さんが大好きです!!」

「……は? 夢の、続きか?」

「夢? もうー、覚えているんですか。要さんのエッチぃ〜」

 陸からすれば要とは念願の両想い。浮かれていたのが最大のミスであったが、男女感の恋愛が初の陸には、要の心の葛藤までは読めない。


 軽い言動、ラブラブ全開で能天気に突撃してくる陸に、要は今まで秘め続けた想いのつらさを馬鹿にされたように感じた。

 正常な思考のストッパーが外れ、想いは肉欲になり漏れ出していく。

 要は陸の両腕を掴みベッドに引き倒す。即座に身体の位置を変え、ベッドに仰向けになった陸の上に覆い被さった。


「そうだな、同情で構わない。了承したという事は、この身体は俺にくれるんだな」

 突然の事に目が開ききってる陸を見て、その口から拒否を聞く気がない要は、その状態のまま吸い寄せられるように唇を合わせた。

 強引に奪われたような口づけだが、それは優しく触れてくるもので、互いの唇の先端がふわりと当たるくらい。

 ふゆんっ

 まさしく未知の感触が陸を襲う。要から見ればまさしくこれは強姦図だが、受ける側の思いのみで大きく違ってくる。


 手慣れた感じで脱がされていく衣服達。普通のタートルネックにキャミソール、ウエストゴムの膝丈スカートはあっという間に脱がされて、ベッドの上から さようならだ。

 下着姿にされ、さらにブラジャーのホックもさらっと外され、要の手際の良さに陸は感嘆する。


 テレビで見るだけでも、例え向こうはこちらを知らなくとも、女の子はオシャレにしたいものだ。

 もちろん陸も例外ではなく、勝負下着と銘打たれた上下セットのピンク色のランジェリーを着用していた。うん、完璧だ。

 全身脱毛も終了しているし、おしっ!バッチコイの陸には先への興味しかない。

 陸を脱がしながら、要も上半身の服は脱いでおり、陰影のついた見事な身体が陸の前に晒されている。大変眼福である。

 拒否を示さない陸に、要はさらなる段階に進む。わずかに唇を開き舌を出し、緩やかに閉じられた陸の唇の中心に舌をねじ込む。


「ぅんっっっ…」

 要の舌がニュルッと侵入してきたので、唇は自然に開いていく。熱くて柔らかすぎる。

 全身が筋肉質な要の身体に反して、唇や舌の頼りないほどの柔らかさに陸は翻弄されていく。

 陸の唇から漏れる喘ぎ声だけを心地よく耳にしながら、無心で唇を味わっている要の瞳はかたく閉じられている。

 しかし受ける陸は違う。

 口づけ真っ最中なのに、ガッツリ瞳は開いており、至近距離で口づけにより角度の変わる要の美しい顔を、ここぞとばかりに堪能していた。

 しばらくし、互いの唇は離れていく。

 陸は要をガン見し鑑賞しているが、要は真正面から陸を見れるほど大人になれてはいない。

 この行為を望んではいない(と要は思っている)陸の表情を見た瞬間に、もう今後一切性行為は陸と出来なくなると確信がある。


 陸から拒否を受ければ必ず要の気持ちは萎える。

 男として、身体を満足させれないなら、陸のこの身体さえも他者に譲るか共有しなくてはいけなくなる。それだけは死んでも無理だった。

 唇を吸い終わると、一度頬に唇をつけ、わざとリップ音を響かせてキスすると、陸の身体がビクッと跳ね上がる。

 顎のあたりを舐め、鎖骨の窪みに唇を当てる。それだけで一々ビクッビクッ反応する感度抜群の陸の身体に、要は先行きの不安を覚える。

 服を脱がしても、なお掴み続けていた陸の両腕を解放し、片腕で己の身体を支えつつ、あいた左手は魅惑の張り出た胸部にそっと置いた。

 優しく置いたはずだが、柔らかく、そしてマシュマロ感触の乳房は、要の手の重さだけで呆気なく形を変えていく。


 想像以上の乳房の柔らかさと、甘すぎる陸の喘ぎ声に、要は硬直する。

「…っ……(ヤバイっ)……っ……!!」

 

「……か…な…め………さ…ん…?」


 物理的な後の、この精神的な煽りに脳髄が揺れる。それからは無心の一言。


 陸の意向を確認せず(確認し、拒否されたらヤル気の意思が潰れてしまうから)下着に手をかけ最後の砦を守る布地を脱がせた。


「あ、あの、要さんっ」

 起き上がろうとした陸の肩を要はゆっくりと倒す。

「起き上がらなくていい」

「いえ、あの、私もします! さっきから私ばっかり気持ちよくなっていて、申し訳なさすぎます」


 正直に気持ちを吐露する陸に、要は唖然。


「…あ、そう…か…。…気持ち良かったなら…いい。俺は結構だ」

「どうしてですか?」

 物凄く一方的に奉仕してもらい、これで終わりはないだろう。


「どうしても、こうしても、ここには避妊具がないし。最後までは最初からするつもりはなかった。
 気持ち悪く思われなくて良かった。もう一眠りするか」


 要は寝転がる陸の横へ同じように身体を倒した。足元に追いやられていた掛け布団を引き上げ、陸と己の身体にかける。

「違います! そうじゃなくてですね。…私では…そんな気分にならないですか?
  …確かに物理的に男の人がヤル気にならないと、成立しませんよね…」


 悲しげな声を発しながらきゅっと丸くなる陸を見て、要は即座にツッコミを入れる。


 おい待て、何故そうなる? 要は目眩がした。昨夜の夢が現実なら、そりゃもう恋い焦がれ二番目でいいから俺を見てくれ。と縋り付いた…はず。

 物理的には準備万端なのだが…。


 返答しない要に、陸はゆっくりと身体の位置を要の方に向けた。大きな瞳は涙目になっていて、唇はぎゅっと小さな歯に噛まれている。


「要さんは、私の事が好きじゃないんですか? 誰かと間違えたんですか?」

「違う!! 俺は………陸を愛してる。絶対にそれだけは変わらない」

 要の正常な状態での告白に陸はパァーッと明るくなり、なんと、ど正面から抱きついてきた。

 二人は何も身に着けてない裸体姿。正面から抱きつかれたら色々バレる。

 突然の対処に遅れた要は、終わったと思った。


「うん? あれ? やだっ!? 」

 と可愛らしい発言を残し、陸はガバッと起き上がり同時に掛け布団をめくり上げた。陸の視線はまさにそこに釘付けだった。


「なっ!?」

 隠すにも隠せそうなものは、要の周りには存在せず太陽光で明るくなった室内は、存在感たっぷりの要の裸体を生々しく浮き上がらせていた。


「わぁぁぁ、綺麗…」

「んっ?」


 陸の様子が要の思う姿とかけ離れて過ぎていて、呆然と固まる。


「要さんの裸体は、筋肉の凹凸が素晴らしくて美術彫像のように美しいです。神々しいですよ!!
 色っぽい…。
 はぁぁぁ…要さんの裸体は、男性的な部分こみで本当に綺麗です…」

「………そ……そう、か……」

 褒めちぎってくれるのは嬉しいが、どうも性的な何かではなく純粋に造形美を堪能してる陸に、どうしようか迷ってしまう。


「要さん!!」

「な、なんだ」

「我慢してますよね?」

「……………。」黙秘だ。ここまで見られて、違うとは言えないが、肯定しずらい。

「別にゴムは なくてもいいじゃないですか?」


 先を考えられない歳若い者に多い台詞。陸が彼氏と話していた優一(要は彼氏だと思いこんでいる)とは、ゴム無しでやっていたのかという怒りが湧く。

 陸に対して要は即座に否定しよう口を開こうとしたら、陸の人差し指は要の唇をぷにっと押してきた。

「もし、赤ちゃんできちゃったら責任とってくれたらいいんです! 要さんの子供なら、絶対に可愛いだろうし早く欲しいな」

 要は無言で、陸をベッドに押し倒す。

「本気か? 撤回を聞く気はないぞ」

 脅しにも似た要の言動は、陸には効かない。むしろこう近くで要と話せて楽しくて仕方なかった。


「はい、もちろん本気ですよ。あ、あと、要さん。私、涼介さんの事、男性として好きだと思ったこと一度もないですよ。
 私より細い人はタイプじゃないです。私は、要さんのように均整がとれた美術彫像みたいな体型の人が好みです。
 で。田中優一くんは、彼氏じゃないです。ちょっとだけ背伸びしたくて、嘘ついちゃいました、すみません」

「ちょっと、まて。違うだろ、あいつらのセックスを見て、泣いてなかったか!?」

「えぇーー見てたんですか!?」

 恥ずかしさで照れながら慌てふためく陸だが、要の真剣な表情に照れが消えて、正直に話す。


「あれは……お姉ちゃんと涼介さんを見ながら、要さんと要さんが当時付き合っていた彼女さんも、あんな事してるんだって思ったら、悲しくなって。
 子供だし仕方ないけど、それでもヤキモチと羨ましくて、泣いてました。
 うわっ!!! 要さん!?」


 覆い被さり抱きしめてくる要にびっくり。柔らかな乳房が筋肉質な胸板に押しつぶされ、形がなくなってしまうほどの密着は、二人の心臓の音がぴったりと重なり安心感を生む。

 生の肌で触れ合うことの心地良さは、他に類をみない。


「……陸は、まさか……はじめから俺が好きなのか?」

「はい、私の初恋は要さんですよ!!」

 元気よく答えられても、それが飛び上がるほど嬉しい事実であってもだ…。


「俺の思い悩んだ辛い日々は、何だったんだ……」

 要の切実なつぶやきは陸には届かない。

 密着した要の肉体美を堪能しつつ、陸は広い背中に手を回し、肩口あたりに頭をつけ、要の筋肉質な身体へ、猫の匂い付けのように擦り擦りと自分のマシュマロボディを擦りつけて楽しんでいる。


「要さん」

「ん?」

「大好き」

「…俺は、陸を、愛してるよ」

 朝の穏やかな時間が、二人の濃厚な時間の始まりになっていく。




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