極上蜜夜~一夜の過ちから始める契約結婚~
商談スペースのようなソファに私を下ろすと、彼は一度奥に姿を消し、なにかの用紙を持って戻ってきた。
相談受付用紙と、パスポートの再発行に必要な申請書だと言われた。
ボールペンを貸してもらい、必要事項を記入して渡すと、彼はそれを改め始めた。


私と彼の間に、無言の沈黙が続く。
少し落ち着いたのを機に、私は書類に目を伏せる彼を、上目遣いで窺った。
今になってやっと、彼の顔を意識して見ている気がする。


黒というより少し色が抜けたこげ茶色の髪は、さらりとしている。
中央よりやや右寄りに分け目を作っていて、自然な形ですっきりセットされている。
短すぎず長すぎず清潔で、普通のサラリーマンでも好感度が高いスタイルだ。


男らしい太い眉は、眉尻がわずかに上がり気味で、わざとらしくなく整えてある。
切れ長の目は、涼し気で凛とした印象。
鼻筋が通っていて、薄い唇。
端整でありながら、どこか精悍な顔立ちをした超イケメンだ。


日本でもトップクラスの選ばれしエリート、外交官。
外務省職員の中でも、外交官になれるのは、特に優秀なたった一握りの人間と聞いたことがある。
目の前にいるのは、普通にしてたら絶対お知り合いになる機会もない、超難関の職務に就く、インテリジェンスな紳士だ。
取っつきにくそう……と勝手なイメージを持っていたけど、この人は、物腰も柔らかい。
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