密偵をクビになったので元主のため料理人を目指します!
 セオドア殿下は王位争いの最も手強い敵として、主様を真っ先に排除しようと行動を起こした。
 当然、私たち第二王子派の人間はそれを阻止しようとしたが、主様は手を出すなと命じられてしまった。そうして手をこまねいているうちに最悪の結果が訪れてしまった。

 王位継承権の剥奪。弟の力を怖れた兄によって主様は追放されてしまう。

 他のご兄弟たちはこれまでと変わらず城に残ることを許されているのに、どうして私の主様だけが城を追われてしまうの?

 とても許せることではない。

「今ならまだ間に合います。私に命じて下さい。セオドア殿下を蹴落とすための証拠を集めろと!」

「よく言ったサリア。そうだ、俺たちなら出来る!」

「その通りですジオン。やってやりましょう!」

 日頃は何かと主様を巡って敵視しているジオンだけど、今日限りこの場において心は一つだと確信している。二人で拳を突き上げ、セオドア失脚同盟は完成しつつあった。

「主様、ご安心ください。私が主様を王位につかせてみせましょう」

「サリアは頼もしいな。でもね」

 主様は静かに告げて首を振る。
 長年仕えてきたからこそ、その仕草だけで明確な拒絶だと頭が理解してしまった。
< 12 / 108 >

この作品をシェア

pagetop