身ごもり秘夜~俺様御曹司と極甘な政略結婚はじめます~

 しばらく振動が続いていて、それをクッションの下に入れ音が漏れないようにした。やがて、手に触れる振動が止まる。可乃子が諦めたのだろうと、ほっと息を吐いた。

「琴音?」

 閑がレモン水をいれたグラスを持ち、すぐそばに立っていた。

「気分悪いか?」
「ううん、大丈夫!」

 ありがとう、と笑顔を浮かべてグラスを受け取る。ちびちびと少しずつ飲みながら、琴音の頭の中はぐるぐると可乃子のことでいっぱいだった。
 喋りたくない。だけど、このまま無視し続けていたら、可乃子は閑に連絡を取ったりしないだろうか。

 それが、琴音は一番怖い。

 こくこくこく、といくらか飲んで、グラスをローテーブルの上に置く。
 する、と頬を閑の指に擽られて顔を上げるとやはり彼は心配そうに琴音の表情を窺っていた。

「……辛そうに見える。無理に起きてないで、ベッドに行くか?」

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