お願いだから、俺だけのものになって

(奏多side)


プラネタリウムで
隣に座る美紅を見て
目が合った時・・・

もう美紅への気持ちが
抑えられなかった



美紅の透き通った
瞳に吸い込まれ

気づいたら美紅に
キスをしていた



ゆっくり唇を離したあと
俺はなんて言ったらいいかわからず
うつ向いてしまった



美紅も何もしゃべらない



美紅にきちんと伝えなきゃ!



お前のことしか考えられないくらい
大好きだって!!!




その時
会場が明るくなった



何か言わなきゃ・・・



「お昼食べに、いこっか」



「・・・うん」



お互い目を合わせられないまま
部屋を出た



「私、お弁当作ってきたの・・・」



「え?」



「俺も
 サンドイッチ作ってきた・・・」



「今日のために
 作ってきてくれたの?」



「ああ~
 誰かに料理作ったのなんて
 小学校の時の母の日以来だけどな」



「すっごく嬉しい!
 フフフ 
 奏多君のサンドイッチ楽しみ」



お互い目が合って
一緒に微笑んだ



美紅の
天使みたいな笑顔ってすごいな!



俺の緊張を
溶かしてくれるんだから!



「すごーい!
 奏多君が作ってくれたサンドイッチ
 いろんなものが挟んであって
 おいしそう!!」



「姉ちゃんに言われたとおりに
 俺は作ってただけだけどな」



「お姉さんにも
 お礼を言っておいてね」



「美紅が作ったお弁当も
 あけていい?」



「良いよ」



「え?」



「今日はクリスマスだから
 クリスマスキャラ弁にしてみました!」



「・・・・」



それって・・・

夏樹先輩にも
作ってあげてたよな・・・



美紅が俺のために
一生懸命作ってくれたのは
このキャラ弁を見れば一目でわかる



でも
夏樹先輩が急に俺の頭の中に現れて
俺はちょっとムッとした



「ごめん・・・
 こういうお弁当は好きじゃなかった?」



「え?そんなことない
 作るの大変だったんじゃない?
 すっげー嬉しい」



俺の心の暗闇を隠すように
俺はオーバーに喜んで見せた



「そういえば私
 奏多君の高校のサッカー部の合宿で
 ご飯作りをお手伝いすることになったの」



は?


今なんて言った?



サッカー部の・・・


合宿????




「なんで?学校違うじゃん」



「マネージャーさん達が家に来て、頼まれたの

 私、頼まれたからには
 おいしいって言われる物を作りたいんだ

 副菜担当なんだけど
 奏多君だったらどんな料理を食べたい?」



なんだよそれ・・・



夏樹先輩を喜ばせる料理のことを
俺に聞くか?
普通・・・



「それって
 俺に聞くことじゃないよな」



「え?」



「美紅の方が詳しいだろ!

 毎朝夏樹先輩のために
 お弁当詰めてんだから!!」



「それは・・・
 ただの仕事だし・・・」



「行くなよ!サッカー部の合宿!」



「・・・・それはできない」



「は?なんで?」



「だって、一度引き受けたことは
 最後までやり遂げたいから」



「そんなこと言って
 本当は夏樹先輩に
 会いたいだけなんじゃないの?」



「なんで?
 なんでそんなこと言うの?」



目の前の美紅は
目に大粒の涙をためている



俺だって
こんなこと言いたくない



そう思っているのに・・・



どんどん美紅を傷つける言葉が
でてきてしまう・・・



「俺、もう帰るわ」



「・・・・」



「お弁当も食べる気なくなった。返す。」



そう言って
美紅が作ってくれた料理を
一口も食べぬまま
弁当箱を美紅に渡した



「あ・・・・・」



美紅が受け取るタイミングがずれ
お弁当箱が落ち
美紅のワンピースの上に
おかずが散らばった



真っ赤なワンピースが
ソースやケチャップなどでシミていく



謝らなきゃ!



美紅に謝らなきゃ!



「これ・・・
 今日のためにお父さんが
 一生懸命選んでくれたワンピースなの・・・

 染み抜きしたいし・・・

 私・・・帰るね・・・」



美紅は落ちたおかずを
丁寧にお弁当箱に戻すと

俺を見ずに去っていった



俺は
美紅のことが好きなだけ・・・



好きだから
夏樹先輩のいる合宿に
行ってほしくないだけ・・・



それなのに
俺の嫉妬で美紅を傷つけて・・・

本当に俺はバカだ・・・



テーブルには
俺の作ったサンドイッチだけが
寂しそうに取り残されていた
< 19 / 32 >

この作品をシェア

pagetop