お願いだから、俺だけのものになって
歌い終わって
会場が
静まりかえっている
俺が
涙をぽろぽろ流しながら
歌っていたからだろう・・・
「今日はみんなありがとう!」
尊が俺の分まで
みんなにお礼を言った
俺の涙は
俺の意思に関係なく流れ続け
尊に支えられ
ステージを降りて
俺はテントにこもった
「ちょっといいかしら?」
テントの入り口をぺろりと開け
中に入ってきたのは・・・
きぬさんだった
「奏多君、大丈夫?」
「・・・きぬさん・・・俺・・・」
俺は言葉が続かず
美紅への思いがあふれて
涙が止まってくれない
きぬさんは俺の腕を
両手でさすってくれた
「きちんと自分の思いを
伝えられて
奏多君、頑張ったわね」
「でも・・・
一番伝えたい美紅には・・・
届かなかった・・・」
「そんなことないと思うわよ」
「え?」
「ここを通って
ステージ裏に
行ってごらんなさい」
「????」
「大丈夫よ
商店街の上にある
言霊(ことだま)神社に
奏多君の思いが伝わるようにって
お願いしておいたわ
私の一生に一回だけのお願いだから
きっと叶えてくれるわ」
「奏多!行って来い!」
俺はなんとか涙を抑え
ステージ裏に行った
そこには
出会った時と同じようにうつむき
その場にしゃがみ込む
美紅がいた