右へならえ
1
「竜ちゃん、別れよ」
「はぁ?」
「私……もう無理」
「……お前も他の女と変わんねぇんだな。
俺の見る目がなかったな」

なんで悲しそうな顔するの?

泣きたいのはこっちだよ。

「いい加減にして。
これじゃ私が悪いみたいじゃん。
浮気してたのは、竜ちゃんでしょ?」
「俺、付き合うときに言ったよな?
女友達と遊ぶよ?それでもいいのか?って」
「うん。聞いた。
それでもいいって言ったのは私……
でも、やっぱり私だけを
見ていて欲しかった。だから別れよ」
「……わかった。別れよう」


私は、部屋を飛び出した。
無我夢中で走った。
こんなに走ったのは、中学生以来じゃない?
とにかく竜ちゃんの家から離れたかった。
あの家には、私たちの思い出よりも
女友達との思い出のほうが多いはず。


こうなること、はじめからわかってた。
竜ちゃんは、私のこと本気なんかじゃないって。それでもいいって思ってた。

でも優しくしてくれて
どんどん欲が出てきた。
私だけを見ていて欲しかった。




初めて会ったのは、ヘアサロン。
お姉ちゃんの結婚式があって
髪を切りたかった。
自分が変わりたいし、
イメチェンしたくて。
新しいお店に入った。
オシャレな雰囲気で、
これからどんな私になるのか
ワクワクしていた。


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