右へならえ
それから、順調に付き合っていた。

お姉ちゃん達の結婚式が
ジューンブライドだったから
もう少しで半年になる。

お姉ちゃん夫婦にも
きちんと2人で報告した。

2人とも喜んでくれた。
お兄さんは、あの竜之介に彼女が出来たと
大喜び。
たまに、2人でお姉ちゃん夫婦の
家に行く。

竜之介さんの誕生日も
私の誕生日も、竜之介さんが休んでくれて
2人で祝うことが出来た。

竜之介さんが27歳。
私が21歳。

私は竜之介さんのことを
竜ちゃんと呼ぶようになった。
なぜかというと、
周りの人はなんて呼ぶの?と聞いたら
竜之介、竜之介さん、竜之介くんとかかな?
って言っていたので、
竜ちゃんと呼ぶようになった。
他の人と同じは嫌だったからって言ったら
可愛いって言ってくれた。

幸せだった。
女友達と遊ぶ時は、私に報告してくれた。
忙しい仕事の帰りに
ひとり暮らしの私の家に寄って、
そこから仕事に行くこともあった。

1週間に1度は私に会いに来てくれた。
いつも優しくて、
麻知といると癒されるって言ってくれた。

私は竜ちゃんのことが、
ますます好きになっていった。

だが、年末になるにつれて、
ヘアサロンが忙しくなり、
会える日が少なくなってきた。

そのことは、付き合う時に言われたから
忙しくなると、会う時間が少なくなることは
わかっていた。

クリスマス、年末年始は忙しくなるから。
竜ちゃんは、私に話してくれてた。

私は、会社に入って1年目。
大変だったけど、竜ちゃんに会えることが
エネルギー源だった私にとって、
この状況は少し辛い。

竜ちゃん、会いたいよ。
忙しいのはわかってる。
疲れてるのもわかってる。
女友達と遊ぶのもわかってる。

電話もしたら迷惑だと思うから
メッセージを残す。
忙しくてもヒマな時に見てもらえれば
それでよかった。

メッセージがきたり、こなかったり。
もういつから会っていないんだっけ?
最後に会ったのは……。
12月のはじめだから……。

今日は12月24日。
クリスマスイブだ。
プレゼントくらい渡したいなぁ。
駄目かな?
すぐ帰ればいいし、
竜ちゃんの家に行ってもいいかな?
今日はお仕事だと思うから
まずはメッセージを残しておこう。

_________________________________

竜ちゃんへ

メリークリスマス。
今日もお仕事かな?
忙しくて大変だけど
頑張ってね。

私も仕事頑張るね。
今日仕事終わったら
少し会えるかな?

ちょっとだけでいいので
会いたいです。


麻知


_________________________________

私はメッセージを送った。


でも、既読にはならず
返事が返ってくることもなかった。

竜ちゃん?
忙しい?
それとも……?
私のこと嫌いになっちゃった?
女友達のほうが好きになっちゃった?

だめだめだめ。

まだ竜ちゃんから
何も言われてないんだから。

不安な気持ちをかき消すかのように
私は、仕事に集中した。

昼休み。
スマホを確認すると、
既読はついたが
メッセージはなし。

はぁ〜。

考えても始まらない。
とにかく、仕事終わったらもう1度
メッセージを送ろう。

私は自分で作ったお弁当を食べ、
午後の仕事に取りかかった。

定時の17時を過ぎ、
クリスマスイブなので、
みんな楽しそうに帰って行く。

私はロッカールームで
もう1度スマホを見た。

_________________________________

ごめん。
仕事何時に終わるか
わからない。
だから、今日は会えない。

_________________________________

…………。

私……

何も言葉が出なかった。
竜ちゃんのこと……

メリークリスマスも言ってくれないんだね。

涙が頬を伝うのがわかった。

それから家にどう帰ったのか
わからなかった。
気づいたから、
帰ってきたままの格好で
ベッドに寝ていた。

23時30分。

喉痛い。
風邪ひいたかな?
でもお風呂に入りたい。

私は熱いお風呂に入り、身体を温めた。

今は何も考えたくはなかった。
頭がボーッとしてとにかく寝たかった。
明日が土曜日でよかった。
このまま眠ってしまおう。
私はベッドに潜り眠りについた。



それから熱を出し、週末はずっと寝ていた。

月曜日になり、
体調はよくなったが
まだ喉が痛かった。

竜ちゃんに渡すはずだった
プレゼントは誰にも開けられることもなく
引き出しにしまわれた。

竜ちゃんからの連絡は……。
来ていない。
スマホを見ることすら
出来なかったけど
何の連絡もなかった。

このまま自然消滅にしたいのかな?
竜ちゃんの考えがわからなかった。

私は、決心した。
私から連絡は取らないと。
でも竜ちゃんから連絡が来たら
笑顔でいようと。

それから、
年末前の仕事に追われた。

12月30日。
会社の忘年会。
新人の私は、注文をとったり
上司にお酌したり、バタバタしていた。

はぁ、疲れた。
トイレに行くと、
綺麗な女性が
化粧直しをしていた。
大人の魅力があり、セクシーな人。
服装はいたってシンプルなのに、
色気がある。

きっと竜ちゃんには
こういう女性がお似合いなんだろうなぁ。

私、バカじゃないの?
何、感心してるの?
竜ちゃんのそばにいたいのに
こんなこと考えるなんて。
私は竜ちゃんの女友達に会ったことがない。
それに何人いるかとか、
どこまでの仲なのかも
全然知らない。
竜ちゃんも話さないし、
私も聞きたがらない。
それでよかったと思っていた。
だから竜ちゃんが
女友達と遊ぶっていう時は、
外には出かけなかった。
バッタリ会ってしまったら
嫉妬で狂ってしまいそうだから。
それくらい竜ちゃんが好きだ。
連絡が来なくても
全然嫌いにはなれなくて、
もう私とは終わりだと思っているかも
しれないのに。
私はどんどん恋しくなる。
ほんとバカな女。
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