右へならえ
クリスマスイブ。
久しぶりに麻知から
メッセージが来た。

今日、会いたい。
そう言われたのに……
サロンは、忙しさのピークだった。
待たしておくのも悪いと思い、
俺は、麻知からの誘いを断った。

俺ってバカだよな。
どんなことをしたって、
麻知と会えばよかったのに……

麻知のこと考えれば考えるほど、
臆病になっていく。

はぁ〜。
俺ってこんなに情けなかったんだ。
麻知のことになると
ほんと、ヘタレだ。

でも、この仕事は好きだった。
だから、辞められない。

今日は30日。

麻知に会えなくなって、
もうそろそろ1ヶ月近いんじゃないのか?
マジかよ〜。

ガックリ肩を落とした。

「元気ないじゃない?」
「別に……」

またコイツだ。
俺は、お前なんかと話したくない。

俺は、店内の片付けを始めた。
今日は、サロンのみんなと
飲みに行く予定だ。

みんなは、先に行かせて、
俺は後から行く予定だ。
戸締りをして、みんなの待つ店へ向かった。

店に入ると結構混んでいた。
辺りを見回すと……
アイツしかいなかった。

「みんなは?」
「用事があるとか言って帰っちゃった」
「はぁ?」
「お前が帰らしたんじゃなくて?」
「人聞き悪いなぁ」

そう言ってビールを飲む。
お前の魂胆はお見通しだ。

とにかく、腹が減っていた俺は、
食べたいものを頼んで
コイツは無視し、黙々と食べた。

食べ終えた俺は、レジへ向かった。
なのにアイツは俺に腕を絡めてくる。
マジ、ウザイ。
なのに、俺は疲れきっていて
早く家に帰りたかった。

「敵わないなぁ」

小さい声だが、麻知の声に聞こえた。

俺は、麻知が好きすぎて
幻聴が聞こえたのか?
声がした方を振り返った。

麻知だった。
俺の愛しい麻知は、
俺に知られたくないのか
俯いていた……

俺を攻めればいいのに。
私には会えないのに、
その人とは会うの?って言って
嫉妬してくれればいいのに……


なのに、麻知は下を向いて
ずっと堪えていた。

俺、何やってるんだろ?
麻知のこと大事だって、
言っているのに
やってることは悲しませてばかり……
最低だろ。
こんな男、俺が女なら絶対別れるね。

「竜之介、行こう。
これから、竜之介の家に行ってもいい?」
「えっ?……いいよ」
「やったぁ」

調子に乗って、
俺の腕に胸を押し当ててくる。
俺は、お前なんか抱きたくねぇよ。
俺が抱きたいのは、麻知だけだ。

麻知。俺と別れたら幸せになれるのか?

店から出ると、

「離れろっ。俺はお前と付き合う気もない」
「さっき、家に行ってもいいって
言ってくれたじゃない?」
「俺、グイグイくる女、苦手だから」
「……」
「それに、俺、すっげぇ夢中な女いるから」

俺は、1人で家に帰った。
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