溺愛旦那様と甘くて危険な新婚生活を



 滝川の真剣な表情に驚き、花霞は体に力が入った。やはり滝川は彼の事を知っているのだ。滝川の次の言葉はなんなのか。花霞は怖くなりながらも、返事を待った。


 「鑑椋は、警察を辞めています。」
 「………え…………。」
 「数年前になります。当時、私の部下だった椋は辞めているのです。」
 「そ、そんな………だって彼は警察官だって!」
 「花霞さん。………椋はとてもいい警察官だった。将来はきっと上へと行ける人材だった。だから、辞めると言った時は私も必死に止めたんですけどね。………彼の意思は固かったようです。」
 「……………椋さんが警察じゃない………?」



 花霞は呆然としながら、滝川の言葉を聞いていた。

 では、彼は何の捜査をしていたのか?
 彼の部屋にあった捜査の資料は何なのか?
 そして、引き出しにあった拳銃は?


 花霞は、頭がふらふらしてくるのを感じ、ギュッと目を閉じた。


 「花霞さん、大丈夫ですか?」
 「………はい。少し混乱してしまって………。」


 滝川の言葉に返事をしながらも、花霞は頭の中がぐじゃぐじゃになってしまっていた。


 「奥さん、1つお聞きしてもよろしいですか?」
 「はい………。」
 「鑑………いや、椋は何を追っていたと思いますか?」
 「…………わかりません。わからないからこそ、ここに来たのです。」
 「………そうですか。」


 花霞はつい嘘をついてしまった。
 
 椋が後輩である遥斗を殺した人を探している事や、拳銃を持っている事は、警察官ではない彼がしてはいけないような気がしたからだ。
 彼が何かの罪になってしまうのが、怖くて花霞は本当の事を滝川に伝えられなかった。

 滝川の鋭い視線は、そんな花霞の事を全て見抜いているように感じてしまい、つい視線を下に向けてしまう。



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