溺愛旦那様と甘くて危険な新婚生活を




 「なんとか、間に合った。」


 花霞はそう呟いた。
 何となく、明るい時間たちに祈った方がいいような気がしたのだ。

 花霞は、手を合わせて、また瞳を閉じた。
 先程よりも長い時間、花霞は願った。
 
 安らかな眠れますようにと。
 そして、笑顔で過ごせますように、と。







 約1年前から花屋にくる電話の注文。
 それは、病院で入院中だというおじいさんからだった。
 大切な人を、ある場所で亡くし、祈りに行きたいけれど行けなくて困っているというものだった。
 お金は倍払うので、指定の場所に花を手向けて手向けて欲しいとの事だった。

 電話を受けた花霞は、花の代金だけを受けとる事を条件に、それを承諾して指定された場所に向かった。そこには枯れてしまった花が1輪置いてあり、誰かが手向けたのがすぐにわかった。
 花霞は、そこで何かあったのかはわからなかったけれど、ここで命を落とした人が居るのだ。そう思ったら胸が締め付けられる思いを感じ、もう一度花屋に戻って、栞に訳を話してから掃除道具を持っていき、その場所を綺麗にし、花瓶を置いて、ガードレールに固定した。そして、そこに作った花束を飾った。
 その後、手を合わせてお祈りをした。これは依頼主に頼まれたことではない。けれど、きっと入院中のおじいさんがしたいことなのだと思ったら、花霞は自然のそうしてしまった。
 ただご冥福を祈るしか出来ないけれど、代わりにしたいと思ったのだ。


 それから、1週間後にも同じおじいさんから連絡があり「この間はありがとう。また、あなたにぜひお願いしたい。これからずっとお願いすることになると思うけれど……よろしく。」と、言われたのだ。

 それから、このお祈りはずっと続いているのだった。



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